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「姫希って、意外とモテモテだね?」
「……そんなことない。」
「だって、今日だって若森に付きまとわれていただろ?」
すると姫希は、俺の方を真っ直ぐ見ながら、小さく呟いた。
「……もしかして、ヤキモチ妬いてるの?」
「そんなんじゃねーよ。」
「……本当に?」
「あいつ相手に妬くはずないだろ。それよりも……」
「それよりも?」
「ううん。何でもない。」
俺が心配しているのは、そんなことなんかじゃない。
それよりも今の俺には、姫希に伝えなければいけないことがあった。
俺たちの今後において、とても大切なこと。
けれどもそれを告げれば、姫希はきっと悲しむだろうから、俺は今日も何も言い出せずに、ありったけの愛情を彼女に一晩中注いだ。
この先に訪れるであろう、不穏な予感から目を背けながら。
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