プロポーズは突然に?

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「知里くん、おかえりなさい」 台所で料理を作りながらお母さんがにっこり微笑んだ。 「おかえり」 リビングのソファーに目を向ければ可愛い顔の男の子がひとり座ってテレビを見ていた。 「りっくん、ただいま」 りっくんこと、陸斗は、俺の弟。 花音ちゃんのお兄ちゃん。 と、言っても年齢は花音ちゃんと同じ。 つまり、ふたりは双子。 本当にそっくりなんだよね、顔が。ふたりして可愛い。性格は、りっくんの方が大人と言うか妙にクール。 「りっくん、なに見てんの?」 花音ちゃんをソファーに下ろすとテレビに釘付けになっているりっくんに問いかける。 「ちーくんの今日の卒業式」 「え?」 よく見ると、かれこれ数時間前に行われたばかりの卒業式の映像が流れていた。 「ママが撮ったっていうから。見てんの」 「……撮ってたんだ」 「だって知里くんの晴れ舞台じゃない?絶対ビデオに収めておきたいと思って」 ごめんねお母さん……残念ながら俺、爆睡してたよ。 「あ!ちーくん!」 りっくんはそう言うとソファーから立ち上がってテレビを指さした。 42型の大きなテレビ画面に映るのは、証書を受け取り眠そうな顔で壇上を降りる俺の姿。 「ちーちゃん、ちゃんと目あけた?」 と、花音ちゃん。 「頑張って開けた方なんだけど……あれ」 「ちーくんは元から眠そうな顔なんだからしょうがねえよ。こんなもんだろ」 ガーン。 「りっくん……お兄ちゃんなんか悲しい……」 「はいはい、そろそろゴハンにしましょう?今日は知里くんのお祝いなんだか……まあ!」 台所から出てきたお母さんは俺を見るなり目を丸くした。
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