プロポーズは突然に?

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3月1日。 ついにこの日がやってきた。 ブレザーの胸ポケットには紅白の花。 丸い筒に入った卒業証書。 今日は、高校の卒業式です。 俺はというと、お察しの通り式中は爆睡。 返事をして証書をもらうとこは一応やったよ。 あとは爆睡。 だから校長先生や来賓の人がどんな話をしたか分からない。 でも、俺にはそんな話必要ない。 エラい人たちにおめでとうと言われるより、たったひとりの大好きな人に、おめでとうって言われることのほうが何百倍も嬉しいし価値があるから。 そう、 大好きな大好きなだーいすきな、 俺のご主人様、 塚原 結くんに「卒業おめでと」って言ってもらえれば、十分なのだ。 体育館での式が終わるとクラスで最後のホームルーム。 3年まで、担任の先生は真野先生だった。 元恋人。 気まずさは不思議となかった。 2年のときに別れて以来、俺たちは“先生と生徒”の関係に戻った。 それ以上もそれ以下もない。 先生と生徒という、本来あるべき姿に戻ったのだ。 先生と付き合っていたときは悲しいことばかりで泣いていたけど、 先生を恨んだりはしてないよ。 先に好きになったのは俺のほうだから。 それに今はもう、あなたを忘れるくらい好きな人が出来たから、憎んだりなんてしてないよ。 「卒業、おめでとう」 教壇に立つ真野先生は相変わらずカッコ良かった。 でも、今日でさよならだよ。 今までありがとうございました。 俺は心の中でそうつぶやいた。
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