1547人が本棚に入れています
本棚に追加
/82ページ
「わぁ~ん、ジャム、手についた~」
「どんだけ不器用だよ……」
「ティッシュはー?」
「テーブルの下にあんだろ」
「ん……あ、あった」
テーブルの下を覗くとティッシュ箱と、そのとなりに1冊のフリーペーパーが置いてあるのが目に入った。
なんだろ……コレ……。
ズイッと引っ張り出して手に取ってみる。
「賃、貸……物件……って……結くん引っ越すの?」
首を傾げる俺を見て結くんはコクリと頷いた。
「ここ、2年契約だから、更新すればまた住めるんだけどさぁ、大学はちょうど卒業だし、就職先の学校こっから結構遠いし、いっそのこと引っ越そうかと思って……親も金出してくれるって言ってくれたし」
「そう、なんだ」
「今週中にどっかいいとこ見つけたらすぐ荷物まとめて、卒業式前には引っ越さないとって感じ。何気に忙しいんだよ……」
結くんは大きくため息をつくとパンをかじった。
「就職先の高校って……どこになったんだっけ?」
「んぁ?あ~、あそこ、港区の方。駅はどこが一番近いんだったけな……」
港区、ってことは俺が行く大学と近いじゃん……!
俺は、フリーペーパーをバサッとテーブルの上に置くと、あぐらから正座に姿勢を変える。
「……な、なんだよ」
「あのさ……」
「うん?」
「結くん。俺といっしょに暮らしませんか?」
その瞬間、結くんの手からポロッとパンが落っこちた。
最初のコメントを投稿しよう!