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結くんの顔がみるみるうちに赤くなる。
体操座りするように膝を抱えると、そのうえにちょこんと頭を乗せた。
そして、コクリと、頭を動かす。
「……え?」
「わかった……」
「わかったって……」
「いっしょに、暮らしてもいいよ」
や
や
「やっ……たああああ!」
たぶん俺、こんなに大きい声出したの生まれて初めて。
でも、叫ばずにはいられなかった。
結くんと一緒に暮らせる。
毎日一緒。
ゴハン食べるときも、テレビ見るときも、お風呂入るときも、寝るときもずっと一緒。
甘ったれで、寂しがりやで、結くん命、な俺にとってこれ以上の幸せはない。
すでに、頭の中では妄想が広がっていて、家に帰ると結くんが「ゴハンにする?お風呂にする?それとも……」と言っているベタな場面が浮かんでいた。
ヤバい……妄想だけで……たちそう……。
俺は、ハッと我にかえると、テーブルに手を置いて身を乗り出した。
「そうと決まったら!早速なんだけど……明日の夜、うちの親に会ってもらえないかな……?」
「ええ!?」
「結くんのこと、紹介したいから」
「しょ、紹介って……!」
「父さんも結くんのこと見たらきっとすぐ良いよって賛成してくれると思うし」
「うわ……なんか突然、いろんなことが具体化してきたな……緊張する」
「なんなら、息子さんを僕に下さいって言ってくれてもいいよ?」
「言うかアホ!!!!」
だよね……。
それに言うとしても、それは俺のセリフだからな。
結くんをお嫁さんに下さい!みたいな……?
想像したら顔がニヤけてしまった。
「なに笑ってんだよ」
「んー……幸せだなあと思って」
俺はニコッと笑うと、身を乗り出したまま、いまだに真っ赤な顔をしている結くんにキスをした。
少しずつお日さまがあったかくなってきた春のはじめ。
俺と結くんの、新しい生活が今、
幕を開けようとしていた。
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