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「もしかして一緒にルームシェアするのって、塚原くんなの?」
ティーカップに紅茶を注ぎながらお母さんがひらめいたような顔で言った。
「そう」
俺の返事を聞くとお母さんは嬉しそうに頷いてティーカップを結くんと俺に差し出した。
「知里くんがいつもお世話になってるみたいで……」
「あ、いえいえ。とんでもないですっ」
「よく塚原くんのおうちに泊まりに行ってるみたいだけど、ご迷惑じゃないかしら……」
「全然全然!自分、一人暮らしなので大丈夫です!むしろ、誰かいてくれたほうが楽しいのでっ」
結くんは緊張のせいかぎこちない笑みを浮かべながらもそう答えた。
「あら、一人暮らしだったんだ。知里くん、塚原くんのことは大事な人って前に教えてくれたんだけど、詳しいことは全然だったから……そっかあ。あ、クッキー持ってくるね」
お母さんがまた台所へと向かっていくと結くんがひじで俺をこついた。
「お前なんで余計なことしか言ってねぇんだよ……!」
「余計じゃないよ、いちばん大切なことだけ伝えたの」
「本当にお前は……で、みんな俺のことはどこまで知ってんの?」
「何も知らない、かな……俺、結くんについてベラベラ話してないから。お母さん、結くんは俺と同い年だと思ってたみたいだし……」
「もしや親父さんも!?」
「うん、なんも知らない。今日初めてちゃんと話する」
「ああ……そう……なんかプレッシャーで頭痛くなってきたよ……俺」
結くんが青い顔で頭を抱えたとき、リビングのドアの開く音が聞こえた。
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