1547人が本棚に入れています
本棚に追加
/82ページ
そのあとは結くんも一緒に夕飯を食べた。花音ちゃんとりっくんは結くんをすごく気に入ったみたいで「ゆーちゃん」と呼んでベッタリくっついていた。
夕飯を食べたあとは結くんを家まで送る。
あたりはすっかり真っ暗で、住宅街を抜けた先の遊歩道には誰もいない。
「ひとりで帰れるから送ってくれなくて良かったのに……」
「いいの。俺がいっしょにいたいんだもん」
さっきくっつけなかった分、結くんにピタッとくっつく。
「あんまくっつくなし」
「誰か来たらちゃんと離れるから、ねっ?」
甘えるように尻尾を振ると、結くんは「しょうがねぇな」と言って前を向いた。
「今日は来てくれてありがとね」
「ああ、うん。しかし、あれだなー、やっぱりというか、さすがというか……親父さん、知里にそっくりだった」
「ほぇ?そお?」
「うん。超~そっくり!顔とか、ちょっと変わった性格とか……」
結くんは俺の顔を見ると思い出し笑いするようにクスクス笑った。
「それから、すごく優しいとことか……知里にそっくりだった」
あ、だめ、結くんのその笑顔やばい。
今、プツって切れたよ、理性が。
俺は結くんの腕を掴んで引き止めると、少しだけ背中をかがめて唇を重ねる。
少しだけ冷たい夜の風が、俺たちの髪の毛をそっとなでる。
なんだかこの場所が、俺と結くんのためだけに用意された舞台みたいに感じる。
最初のコメントを投稿しよう!