同棲準備スタート

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「当てはまる物件が3件、ありますねぇ。こちらなんですけど……」 そう言ってファイルを差し出すオジサン。俺たちはファイルを覗きこむと載っている間取り図を見せてもらう。 「こちらが駅から5分家賃は9万、こっちが駅から8分で13万、これが駅からちょうど10分で11万、ですね……」 「あー、はい……あの、実際に見学出来ますか?」 「ええ、もちろんです。今、車出して来ますね」 オジサンはニコリと笑うとお店を出て急いで車を取りに行った。 「ねぇ、結くん。この、駅から5分、いいんじゃない?すごい安いし、部屋も広そう」 「いや、待て……ここで安易に決めるのは危ない!どう考えても怪しいだろ!?なんでいちばん近くていちばん安いんだよ。なんか裏がありそうじゃん」 「そうなの?」 「実際に見てから決めよ」 話しているうちに車がお店の前に到着、オジサンの運転でそれぞれの物件へと向かった。 1件目、徒歩5分9万円のマンションへ。 「今あいてるのがこの部屋なんですけど……どうぞ~」 鍵を開けてもらい部屋の中に入る。 「わあ~ひろーい」 結くんの今の家より断然広い。俺は靴を脱ぐとバタバタと走ってベランダのドアを開ける。 「ねぇ、結くん!みてみてっ!」 「なんだよ」 「お墓」 「っ!!!」 ベランダのドアを開けると、真下、ちょうどマンションの裏手にあたる場所一面が墓地になっていた。 「すごい景色だね~」 「だから言ったじゃん!絶対怪しいって!」 「あ、結くんうしろ……」 「ぃやああぁっ!」 結くんは女の子みたいに叫ぶと俺にピタッとくっついてガタガタと震える。 そっか、結くんって怖いのイヤなんだっけ……ここに住んだらもしや結くん、いつも「こわい」って言ってこうやって甘えてくれるんじゃ……!? 「結くん、ここにしよう!」 「絶対やだ!!!!」
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