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お店に戻って契約を済ませる。詳しいことは分からないので全部結くんに任せてしまった。
どうやら来週には引っ越しが出来るみたい。
来週からは結くんとの新婚生活がっ……!
くうぅぅぅ~っ!
楽しみすぎるっ!!!!
「はあ……家帰ったら引っ越し会社に電話して、荷物もまとめ始めないと……それからガス電気水道も電話して……」
店を出るとルンルン気分の俺に対して結くんは、眉間にシワを寄せたまま……。
「それから~……」
「結くん」
「んぁ?」
「……引っ越すの、ヤダ?俺と暮らすの、ヤダ?」
「は?なんだよ急に」
「だって結くんさっきから眉間にシワ寄せて怖い顔……やだって顔してる」
しょんぼりと尻尾と耳をたれ下げていると、結くんがポンポンと背中を叩いた。
「これは色々考えごとしてたから。大体、お前と暮らすのイヤだったら最初から断ってるっつーの。ムリして暮らそうと思うほど俺の心は広くないし」
「うん……」
「お前んちで親父さんに言ったけどさ、本当に俺、その、なんていうか……知里といっしょに暮らせるの……た……た、楽しみにっ、してんだから、な」
結くんはギュッと俺の服の裾をつかむと、顔を真っ赤にしてボソボソとつぶやいた。
「結くん……」
「だから!お前は余計な心配しなくていいんだよ!わかった?」
「わんっ!」
「ん、いい返事」
「じゃあ、頭なでなでして?ヨシヨシって」
「断る」
「ガーン!なんで~?」
「こんな街のド真ん中で、んなこと出来るかバカ犬!」
「ううぅぅ……」
「……家帰ったらたくさんやるから」
「わんっ♪」
「切り替え早っ……」
さすが俺のご主人様。
俺が喜ぶ方法をよく分かってる。
結局俺は、結くんの家に着くまでゴキゲンだった。
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