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そして次の日。
朝イチで結くんから電話が掛かってきた。
「んぁ?結くんおはよお」
『やっぱり寝てたか……こら、さっさと起きろ!もうすぐ引っ越し屋来る時間だろ?』
「うぅん……うん」
目をゴシゴシとこすって部屋の時計を確認する。
『昨日も言ったけど、俺は不動産屋に鍵返してからマンション行くようになるから。知里は先に向こう行ってて』
「うん」
『ちゃんと不動産屋に行って鍵もらってから行くんだぞ』
「うん」
『道は覚えてるよな?わかんなかったら地図もらってから行け』
「うん……」
『部屋は508号室、いちばん奥の部屋!』
「……結くん、俺もうすぐ19歳だよ?子どもじゃあるまいし、そんなに心配しなくて大丈夫……任せてよ」
『任せらんねーわ!見た目は大人でも中身は完全に子どもだろうが!』
「中身は子どもでも、アッチの技術はちゃんと大人だよ?心配しないで」
『してねーよ!朝から下ネタ言える余裕あんならさっさと準備しろバカ!!!!』
プツ……ツーツー……。
おろろ……切られた。
なんか悲しいんですけど。
はあ、とうなだれていると、ドンドンと部屋のドアを叩く音が聞こえてきた。
「ちーちゃん、入っていい?」
あ、花音ちゃん。
「いいよ~」
ベッドの上で返事をするとドアがゆっくりと開いて花音ちゃんが顔をのぞかせた。
「……起きてる?」
「起きてるよ」
「そっか。こっちから見たら目閉じてるように見えたから座ったまま寝てんのかと思った」
「一応コレ、俺なりに開けてるつもりなんですけど……」
花音ちゃんはニコッと笑うと走ってきてベッドによじ登り、俺のひざの上にちょこんと乗る。
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