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お互い自分の部屋にこもって荷物の整理。
当たり前だけど、荷物の量が少ない俺はすぐに終わってしまった。
「ゆーうくんっ」
ひょこっと結くんの部屋をのぞくと、段ボールの中に埋もれた結くんの頭がチラリと見えた。
「俺も結くんの手伝うっ」
また断られるかも……と思ったが、今度は、
「ありがと。たすかる」
と、返事が返ってきた。
ひとりじゃ今日中に終わらないと思ったんだろう。
「それじゃあ、服出してもらっていい?夏服は白のカラーボックスに、冬服は水色のカラーボックス。コートとかアウターはハンガーに掛けてクローゼット」
俺の方を見ずに淡々と指示を出すと、結くんは本棚の整理を始めた。
「はぁい」
返事をすると早速段ボールを開けて洋服を取り出す。
これは~……夏服かっ。
白いカラーボックスっと……。
こっちの段ボールは……冬服だから水色のカラーボックス。
あー!この服、去年のクリスマスに俺が買ってあげたやつ!懐かしい~!
すっごく喜んでくれたっけ……。
洋服を手に取ると自分の口元に近づける。
ああぁぁ……結くんのにおい……結くんのにおいが……俺が買ってあげた服に結くんのにおいが……あっ……やばい……イケる、この服とこのにおいだけ、俺、イケる……っ!
「あっ、いい、いく、いけるよ、結くん……結く……っだ!!!!」
危うく昇天しそうになったとき、つむじにゴッ!と何かが振り下ろされ激痛が走った。
「こんの……バカ犬!!!!人の服使ってなに妄想してんだよ!!!!」
見上げて見れば分厚い本を持った結くんが鬼のような形相で仁王立ちしていた。
どうやらあの本の角が俺の脳天を直撃したらしい。
ううぅ、ヒドい……角って……殺意こもってるでしょ……?
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