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「結くーん、お風呂掃除終わったよ」
お風呂掃除が終わり結くんの部屋をのぞく。
あ……さっきより進んだみたい。
「ごくろう。じゃあ次は、はじめてのおつかいに行ってきてください」
「おつかい?」
「そう。今日の夕飯の材料を駅前のスーパーで買ってきてくれる?メモ書いてやるから」
「結くんは行かないの?」
「悪いけど部屋が終わらないことには行けないから、知里だけで行ってきて」
「はぁい……」
結くんは段ボールからメモ帳を出すと、ペンでサラサラと何かを書き始め、財布といっしょに俺に手渡した。
「今日は蕎麦な。天ぷら蕎麦」
「おそば?なんで?」
「引っ越したときは蕎麦を食べるといいんだとさ。理由は俺も良く知らんけど、昔の習わしはやっといて間違いないから大丈夫!つーことで、頼んだぞっ」
「はーい」
おつかいとか何年ぶりだろ。結くんといっしょに行きたかったけど……仕方ないか。
駅前のスーパーで頼まれたものを買う。
「蕎麦とー……ネギとー……玉ねぎ、ゴボウ、にんじん、えび、天ぷら粉、たまご、めんつゆ……んもー、買うものいっぱいじゃん」
メモしてもらって良かった。口で言われただけじゃ絶対覚えきれないもん、この量。
結局、全部買ったらビニール袋が2つになってしまって、俺は両手がふさがった状態でマンションへ戻った。
「たしかに……5階で……階段ってツラい……」
初めはおしゃれだと思っていた階段も、荷物が重い今は正直どうでもいい。
キツい……キツいけど……猫足バスタブのためには多少なりの不便は我慢しないと……。
結くんとの入浴シーンを妄想しながらなんとか5階まで登りきった。
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