もうひとりの結くん

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なぜなら今日は結くんの卒業式だから! 結くんにとって特別な日。 俺の卒業式のときに色々してくれたぶん、今度は俺がお返しするばん。 と、いうわけで、今日は初めて結くんのために朝ゴハンを作ってあげようと決めたのだ。 もちろん結くんにはナイショで。 メニューはオムライス。 え、朝からオムライスかよ……というゲンナリした声が聞こえてきそうですが、そんな声は大胆に無視します。 だってオムライスって頑張って作った感があるでしょ?なんかさ。 自分の部屋を出て、台所へ向かうとスマホを取り出す。 すごいよね、今はスマホでレシピが見れちゃうんだから。 「えーと……まずは……玉ねぎを切る……はぁ~い」 自慢じゃないけど、俺はまともに料理をしたことが今の今まで1度もない。 料理自体に興味がないのはもちろんだし、家に帰れば常にゴハンは出来上がってるし、調理実習では野菜を洗ったことしかない。 包丁を握ろうと思うと横から女の子が割り込んで「あたしが切るから知里くんは見てて!」と言われ全く手出しができない状態。 そんなわけで料理はしたことがない。全く。 「玉ねぎを……みじん切り……え……どうやんの?てか、目がいたい……いたい~」 玉ねぎを半分に切っただけで涙がボロボロこぼれてきた。 すごいね玉ねぎ……人を泣かせる能力を持ってるなんて……ううぅ……。 んでもって、みじん切りの仕方は全然分かんないし……。 とりあえず全部スライスで切ってそのあと包丁をバタバタ振り下ろしてみよう。 そういえば前に結くんがみじん切りするとこ見てたはずなのに……意識が違うとこ(エロいとこ)に行ってて全然記憶に残ってない。 だめだなあ……今度はちゃんと見て少しは料理の勉強しないと。
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