もうひとりの結くん

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「えーと……次は……あ、フライパン用意しないと……」 てか、フライパンってどこ。 普段どれだけ料理を結くんに任せているか痛いくらい思い知らされる。 「フライパ……」 ガラガラガラ……ガシャン! 「フライ返し……」 ガシャン! 何かするたびに、必ず何かが落ちたり当たったり、はっきり言って騒々しいことこのうえない。 ようやくフライパンで炒め始めたものの、手際が悪いせいか火が強いせいか、煙がモクモクあがっていく。 ……あれ? 料理ってこんなにけむかったっけ? 「ゴホッ……ゴホ。煙が目にしみるーっ……」 「換気扇回せ、ばか」 ……え? ドキリとして振り返れば、ダボダボのスウェットのズボンに、上半身裸の結くんが目を細めて立っていた。 「火使うときは換気扇回さないと煙が充満するぞ」 慣れたように換気扇のボタンを押す結くん。 「結くん……起きちゃったの?まだ寝てていいのに」 「あんだけ、どんがらがっしゃんやられたら寝たくても眠れねーよ!」 ……ん? 俺のせいか……すいません。 「なに作ってんの。つかお前が料理とか初めてじゃん」 「……なんでもいいでしょ」 「もしや……オムライス?」 ガーン!なんでバレた? 「材料がそうっぽいけど……とりあえずお前が作ってるとこ見てるとヒヤヒヤすんだよなー。危なっかしいっつーか……貸せ。俺が作る」 「いい。ひとりで出来る」 「できそうにないから言ってんだけど」 「本当にいいってば!」 「なんでそんな意地張ってんだよ。早く貸せ……」 「これはっ、俺が結くんのために作ってる料理だから、結くんは手伝っちゃダメなの!」 う……言っちゃった……。
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