もうひとりの結くん

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「もっとシンプルなものってありますか?女の子らしくないやつ」 「女の子らしくないやつ、ですか?そうですねー……では、こちらなどいかがでしょう?」 店員さんは一瞬不思議そうな顔をしたものの、すぐに違う指輪を紹介してくれた。 「真ん中にラインが入っているだけですごくシンプルなんですが、こちらも結構人気がありますよ?」 「そうなんですか?」 紹介された指輪はシルバーで、リングの真ん中あたりにラインが掘ってあるタイプだった。 これなら、結くんも文句言わないかな……値段もそんなに高くないし……。 「これにします」 「かしこまりました」 これに決定。 真っ白な正方形の箱に入れてもらい、真っ白なリボンでくるんでもらう。 こんなに可愛く包装してもらったのはいいけど、どうやって渡そうかな。 卒業祝い~とか言って軽い感じで渡す? それとも、どこかに隠して置いてドッキリとか? あるいはストレートに「結婚を前提にこれからも付き合って下さい!」とか? 色々妄想したらなんだか緊張してきちゃった……。 何にせよ、とにかく結くんが喜んでくれなきゃ意味ないんだけどね。 「お待たせ致しました……ありがとうございました」 店員さんから小さな紙袋を受け取るとぺこりと頭を下げた。 どうやって渡すかはおうち帰ってから考えよう。 そのあとは自分の買い物をしたり、結くんに頼まれていた食べ物を買ったりしてから家に帰った。 リビングのソファーに横になりながら、どうやって指輪を渡そうか考えているうちにウトウトしてしまい、気づいたら爆睡していた。 そういえば今朝はいつもより早起きしたんだった……そりゃあ眠くなるよ。
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