もうひとりの結くん

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「はいっ!」 『ちーちゃーん……あ~け~て~』 陽翔くんだっ。 バタバタと玄関まで走っていきドアを開ける。 「陽翔くん!結くん……は……」 そして、固まった。 「いやらああぁ!まらかえらないのおぉぉ!」 「いででで!髪の毛引っ張ってんじゃねえよ!」 陽翔くんにおんぶされてる結くん……が、陽翔くんの髪の毛を引っ張っている。 「ごめん、ちーちゃん、パス……」 「え!?」 陽翔くんはズイッと近づくと結くんを差し出した。これは……俺が引き取っていいんだよね? 陽翔くんにガッシリつかまっている結くんをベリベリと引き剥がすと、結くんは子どもみたいに両手と両足をバタつかせた。 「いーやーらあぁっ!まらのむーっ!みんらとのむのー!かえらないのぉー!はるとのばーかー!うあああぁん!」 これは……本当に、結くん? 「陽翔くん……これはいったい……」 「ああ、完っ全に飲みすぎた」 「の、飲みすぎ?飲みすぎてこんな風になったってこと?」 「あれ?ちーちゃん、もしや知らない!?」 「なにが?」 「結ね、まじ、死ぬほど酒癖悪いんだよ……!!」 酒癖……ですと? 「飲みすぎるといつものツンデレキャラが崩壊して、超ワガママの超甘えん坊キャラになるんだよ……今日で最後だからってハメ外しすぎたみたいで……こうなる前に止めときゃ良かったんだけどさ……はあ」 「そうなんだ……」 「見たことない?」 「うん。家ではほとんど飲まないし……」 「そっか。もしかしたらちーちゃんにはこういうとこ見せたくなかったのかも。一応、年上なりのプライドってやつ?まあ、完っ全に今見せちゃってるけどさ……」 「いーやあー!びーるのむうぅー!」 これが……結くん。 もうひとりの、結くん!
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