もうひとりの結くん

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「ちさとに、プレゼントあるっ」 「へ?俺に?」 結くんはカバンから四角い箱を取り出すと俺に手渡した。 「なにこれ……」 「あけてみてっ」 ドキドキしながら箱のふたを開ける。そこに現れたのは……。 「あ!これ、俺が欲しかったやつ!」 腕時計。前まで使っていたものが壊れてしまって新しいのが欲しいと結くんに話していたところだったのだ。 「えっ、でもなんで……」 「そつぎょういわい。まだ、けーきしかあげてなかったから……ちゃんとわたしたかったの」 結くん……。「おめでとう」って言ってくれるだけでじゅうぶんだったのに……こんな素敵なプレゼントまで……。 「ありがとう。大事にするね」 「うんっ」 「……実は、俺からもプレゼントがあるんだけど……」 「え?」 俺はテーブルの上に置いていた紙袋を結くんに手渡した。 「なか、みていいの?」 「うん」 紙袋から真っ白な箱を取り出し、丁寧にリボンを外していく結くん。 ゆっくりとフタを開けたところで、結くんの目が大きくなった。 「ゆ、びわ……?」 「そう。ペアリング」 あんなにどうやって渡そうか考えていたけど、意外にもそのときはあっさり来るものなんだな……。 箱から結くん用の11号の指輪を取り出す。 「左手、出してください」 「……はい」 相変わらず結くんの指は細くて長くて、すごく綺麗で。 そっと指をつかむと、薬指にゆっくりと指輪を入れた。 緩すぎず、小さすぎず、指輪は結くんの薬指にピッタリとハマった。
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