もうひとりの結くん

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「俺がしようと思ってたこと全部先にやっちゃうんだもん」 「え?」 「一緒に住もうって言うのも、指輪をあげるのも、俺が先にやりたかったのに……全部知里に抜かされちゃった……ムカつく、ばか」 「ん……ごめん……」 「でも……でも……すごく、嬉しかった」 結くん……。 「知里が俺を好きでいてくれることが、すごく嬉しくて、自分は幸せだなって思ったんだ……」 うん……俺もそうだよ。 幸せ。 結くんを好きでいることが幸せ。 結くんが俺を好きなことも幸せ。 「全部先越されたけど、これだけは俺が先に言えるな」 「え……なに?」 「俺と結婚してください」 「結……くん……?」 「本当は知里が大人になったら言うつもりだったけど、モタモタしてるとお前にまた先越されそうだから今のうちに言っとく……早く大人になって、知里。待ってるから」 前にいっしょにお風呂入ったときに「早く大人になれ」って言ってたのは……こういうことだったんだ。 結くんを引き離すと、返事をするようにそっと唇を重ねた。 甘くて、溶けるようなそのキスにまたカラダが疼き出す。結くんの腰に手を回すと、結くんは俺の首に腕を回してさらに体を近づけた。 が、突然フッと結くんから力が抜けると、ひざから崩れ落ちるようにして床に倒れる。 え……。 「ゆ……う、くん?」 倒れた結くんはピクリとも動かない。 え……うそ……結くん……? 「結くんっ!!!!」 「……スーッ……」 ……ね、寝てるだけ? ビックリしたあー……。 変なタイミングで寝ちゃったよ。
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