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ガイはちょうど運ばれてきた料理を食べながら、もごもごと言う。
セレンス地区、と言うと貴族や商人が多い所か。
「最近そこ多発してるらしいね」
「ああ。襲われたのはトルバードっつう商人の家の娘だ」
ガイによると、トルバード家は最近勢力を伸ばし始めている商家だそうだ。
僕は知らないけど。
一人娘がいるようで、その母親は既に亡くなっているそうだ。
そのため、父親は娘を大変可愛がっているようで、その事でも少し有名に成りつつあるらしい。
「それで、記憶はどのくらい奪われた?」
「まだそこまで情報はつかめてない」
「ふーん」
聞きたい事を聞き終えた僕は椅子から立ち上がる。
「ラル? どこ行くんだ?」
「被害者の家だよ。ほら、ガイも早く」
そう言うと、ガイは慌てた様に残りの食べ物を口に詰め込み始めた。
「ちょ、待てよっ。まだ全然食べてないっ」
待ってなんかあげないよ。
ガイの言葉を尻目に僕は外に出て、店のドアをバタンと閉めた。
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