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「…こ、この子……誰だ……?」
地面に露出した太い枝を枕に横たわるのは、黒衣を纏った一人の少女。いや、正しくは美少女であった。
年の頃は、大体陸斗やクレアよりも少し下といったところだろう。年頃の少女が身に付けるには少し早いレオタード風のボンテージスーツの上から黒マントを纏い、肘まである長手袋から高めのヒールから全てが黒。
しかし、身に纏う色に反してキメ細かな肌は白雪の如し。艶のある長い金色の髪はラクーが整えたのか、地面に付けないように少女の肩からお腹辺りにまで纏められていた。
今は気絶しているようで、横たわる姿はまるで黒百合。陸斗も思わず息を呑んで見惚れてしまうほどであった。
「…ラクー、本当にこの子と俺が?」
「はい……この人が上から降ってきたところに、ちょうどリクトさんが立っていまして……」
この状況で、ラクーが変に出来た冗談を言うわけがない。どうやら、信じられないことだが事実らしい。
これでぶつかったのがこんな森の中でなく、とある早朝の見通しの悪い通学路の曲がり角であれば、どれだけ神に感謝したことか。
「ん~……それにしても……」
何時になく神妙な顔付きで、陸斗は瞳を細めた。
同年代にしては、なかなかの発育ぶり。少なくとも、クレアよりは立派なプロポーションだ。
こんな時に何を考えてんだと自分でも思うのだが、それを差し置いても実に立派なものである。
こんなに均整の取れたスタイルの持ち主を前にして、喜びを分かち合う同志がラクーだけとはなんとも惜しいところ。それ以前に、ラクーは異性に関してあまり興味は無いらしい。
「リクトさん、この人……どうします?さすがに、このままにしておくわけには……」
「ん?あ、あー……そうだな。この子が起きるまで、ちょっと待つか」
ラクーから声を掛けられ、陸斗はハッと我に返る。やむを得ない事情で、クレア達の捜索はお預けとなりました。
陸斗は自分の荷物の中から水筒を出し、布を水で湿らせる。この状況下では貴重な飲み水だが、人助けをする上でそんなことを言っている場合ではないだろう。
「う……んん……っ」
額に濡らした布を乗せると、冷たさに反応した少女が僅かに身じろぎする。この様子だと、目覚めるまでそう時間は掛かるまい。
「ラクー、お前も水飲んで少し休んだ方がいい。ずっと俺達を看てたんだろ?」
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