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「それにしても、何で急にこんな弱っちくなっちまったんだ?オマケにちょっと小さくなってるし」
遺跡で戦ってきた時に比べ、今のレティシアは明らかに弱すぎた。姿も若干若返っており、あの転送の光の後、戦っていたアルマとの間に一体何があったのかやら。
それらしい答えも浮かばずに首を傾げている陸斗の隣で、ジッとレティシアを観察するラクー。
すると、何かに気付いたらしく、瞳を少し大きく開いて陸斗の服の裾を引っ張った。
「リクトさん、多分このせいだと思いますよ」
「は?どこよ?」
ラクーが指差す箇所に、陸斗もまた視線を向ける。すると、あるものに気が付いた。
真っ赤な鎖のような模様が、レティシアの手首をぐるりと一周するかのように刻まれているのである。陸斗が覚えている限り、レティシアがこのような刺青をしていたような記憶はない。
しかし、それ以上に気になるのは、そこから伝わってくる非常に強い魔力。レティシア本人のものとは違うその魔力の感じは、陸斗にもどこか覚えがあるものであった。
「…リクトさん、ここからアルマさんの匂いがします」
「やっぱり、そうなのか……」
不確かな予想が、ラクーの言葉によって確信に変わった。
すると、レティシアはクツクツと嘲笑うかのような笑みを洩らした。
「ククッ……ああ、御明察だ。これは、あの死に損ないが我に刻んだ忌々しい封印だ。おかげで、今の我はほとんど魔力を行使することが出来ん……本当に、忌々しいことにな」
そう吐き捨てるレティシアは非常に悔しがっているようだが、陸斗達にしてみればアルマにはいくら感謝してもしきれない。
彼女がレティシアの魔力を封じてくれたおかげで、こうして逆にレティシアを捕らえることが出来たのだ。出来れば直接感謝の言葉を伝えたいところだが、今の状況でそれは非常に難しいだろう。
「それ、自力で解けたり出来ないのか?」
「ああ、出来んな。生半可なものでは我を縛ることは適わんが、これは奴の血を媒体にした封印だ。ドラゴンの系譜が永きに渡って血の流れの中に伝えてきた魔力は、我の力でも打ち破れぬ。だが、仮に方法があるとすれば……」
そこまで言ったところで、レティシアは陸斗へと顔を向ける。そして、ペロリと真っ赤な舌で自分の唇を舐めた。
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