幻惑の森 戸惑いの幻影

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「貴様の、ティアマットの血に含まれる魔力さえ取り込めれさえすれば、このような封印など消し去ることは容易だろうな……」 「こ、好奇心で聞いたんだ。本気にすんなよな」 レティシアの視線にゾクリと寒気を感じて、陸斗は自分の首筋を両手で隠しながら後退る。わざわざアルマが決死の想いでレティシアを弱体化させてくれたというのに、再び力を与えるなど絶対に考えられない。 ほんの少しでも同情してしまった自分の頬を二、三度ほど叩いて戒めた後、気を取り直して陸斗はレティシアを睨み付ける。 「とにかく、お前には聞きたい事が山ほどあるんだ。洗いざらい、全部吐いてもらうからな」 「ふん、ほざけ。人間などに加担する貴様に、教えてやることなど何もない」 案の定、といった反応をされた上に、そっぽまで向かれてしまった。仮にも敵同士なのだ。そう簡単に情報を洩らしてなどくれないだろう。 しかし、実はここまでは想定内。陸斗は押し殺したような低い笑い声を洩らしながらほくそ笑んだ。 「ふっふっふっ……いつまで、そうやって強気でいられるかな。こっちにはな、お前の口を割らせる秘密兵器があるんだよ」 「なんだと……?」 若干表情に一抹の不安を浮かべるレティシアに、陸斗は確かな手応えを感じて心の中でガッツポーズ。 だが、こちらとて悪魔ではない。素直に話してくれるのならば、それにすぎたことはないのである。 「これが最後の忠告だ。本当に喋る気は無いんだな?」 「く、くどいぞ。そのような脅しに我が屈するとでも思ったか」 ささやかな親切心を出したつもりだったのだが、どうやら本当に喋る気はないらしい。 それならば、こちらとしても取るべき手段を取らざるをえない。早速実行に移すべく、静かに陸斗の手が持ち上がった。 「ラクー、ラクーやーい。ちょっとこっちに来てくれ」 持ち上げた手で、陸斗はちょっと離れた場所で花遊びに勤しんでいたラクーを手招き。それに気付いた彼は、小走りに陸斗の元へと駆け寄ってきた。 「何でしょうか、リクトさん?」 「実は、ちょっとラクーの手を―――もとい、こっちの力を借りたいんだ」 そう言って陸斗が手を伸ばしたのは、ラクー自慢のフサフサでフカフカな金色の尻尾であった。その手触りの滑らかさは、上等の絹すら軽く凌駕するほどの好感触を誇っている。
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