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どうやら苦痛には慣れているが、くすぐり等の特殊な攻撃にはてんで弱いらしい。
結果的に弱点を看破した陸斗はニッコリと満面の笑みを浮かべ、合図を出すようにラクーの肩を叩いた。
「よし、やってくれ」
「はいっ!いきますっ!」
「や、やめろぉおお―――――ッ!!」
恐れおののくレティシアに、ラクーは我が身一つで突貫。露出高めな衣装が災いして、露わになっている腋や脇腹、さらには臍に至るまでありとあらゆる個所をフワフワの尻尾が這い回った。
「く、くぅぅッ!ふぁっ、はひっ、んんん―――っ!」
「さぁっ、早く全部話しちゃって下さい!それまで、絶対に止めませんからね!」
誇り高き吸血鬼として絶対に情け無い姿など見せられぬと、歯を食いしばり、我慢に顔を真っ赤にして堪えんとするレティシアに、ラクーはさらに攻勢を強め、腿の内側にまで攻撃の範囲を広げていった。
「うーん……」
そんな光景を、傍から高みの見物と決め込んでいる陸斗。
見た目の可愛い少年に耐え難き責め苦を味わわされ、魅力的な肢体を淫靡にくねらせる美女という組み合わせは、これがどうして様になるものである。
まるで名画でも鑑賞するかのように神妙な顔付きで眺めていた陸斗だったが、レティシアもしぶとく堪えること堪えること。
彼としてはそれはそれで構わないのだが、ふと悪い考えが首をもたげてきた。
これ、チャンスじゃない?
一ヶ所動いた歯車は、全てを巻き込んで回り始める。クレアという抑止力を失った陸斗を止められる者は、もう彼女一人を除いて存在することはなかった。
「まったく……なかなか強情なやつめ」
どこぞの悪の組織のような台詞と共に、陸斗はレティシアの前へと進み出る。限界はとうに過ぎ、息も絶え絶えなレティシアの表情が、さらに深い絶望に染まった。
彼の両手には、先端がススキの穂のように細かい繊毛に覆われて枝分かれした植物。
なんとも偶然に近くにあったものを採取したわけだが、レティシアが恐れたのは得物ではなく、彼自身の表情であった。
鼻息荒く、口元を歪ませて笑みを浮かべながら歩み寄る様子は、まさにそのテの犯罪者。仲間であるはずのラクーも完全にドン引きであった。
「き、貴様ぁ……ッ!?」
「これだけやって話さないんじゃ……仕方無いよな。うん、これは仕方無いんだ。こっちには正当な理由があるんだ……」
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