幻惑の森 戸惑いの幻影

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「大丈夫大丈夫、考え過ぎだって。まずはゆっくり休んで、それからアーク達を捜そうな!」 「は、はい……そうですね……」 陸斗はサワサワと、上等な毛布のように触り心地の良いラクーの頭と耳を安心させるように撫でさする。 すると、前を歩いていたクレアが、とある建物の前で立ち止まった。 「ここよ。ここに、貴方に会わせたい人が待ってるわ」 クレアが指差すのは、他の建物よりも一際大きく立派な建物であった。真っ赤なレンガの壁にはひび割れ一つ無く、窓は鏡のように顔を鮮明に映すほどピカピカに磨き上げられている。 「ここは、何の建物なんですか?宿屋にしては、看板も無いみたいですけど……」 「ここはね、私達のように森に迷った冒険者の宿泊施設みたいなものなんだって。さぁ、入りましょうか。二人共、もうクタクタでしょ?」 白いレンガを組んで作られたアーチ型の門をくぐり、クレアは建物内部へと続く扉を開く。すると、そこに待っていたのは――― 「あーっはっはっはっ!どんどん持ってきておくれよ!まだまだ、こちとら飲み足りないんだからねぇ!」 「ま、茉莉ぃいいい――――ッ!?」 たくさんの人々で溢れかえった丸テーブルと椅子が並ぶ休憩所の一角にて、陸斗が見つけたのは上機嫌に大笑いしながら飲んだくれる茉莉の姿。 既に相当な量を飲んでいるらしく、彼女の周囲やテーブルの上には空になったボトルがあちこちに散乱している。どこに出しても恥ずかしい、だらしない大人の極みのような醜態を晒していた。 「おや、リクトにラクーじゃないか。久方振りだねぇ」 「いや、そんな長いこと顔見てないわけじゃないだろ……っていうか、とりあえず無事で良かったよ」 こちらに気付いた茉莉に、陸斗とラクーは仲間との再会に安堵の笑みを浮かべながら歩み寄っていった。 「会えて本当に良かったですね!マツリさんは、どうやってここに?」 「お前さん達と同じさ。お嬢ちゃんに連れられて、流れ着いたってわけさね。ちょうど酒が切れちまって、難儀していたんだけれど……やっと一息ついたところさ」 そう言って、茉莉はグラスに注ぐことなく手にしたボトルを一気飲み。空のボトルをもう一つ増やし、深く酒臭い息を吐き出した。 何はともあれ、念願叶って仲間との再会である。アーク達の姿は見当たらないが、クレアの言っていた言葉の意味をようやく理解したような気がする。
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