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「ところで……リクト、そのお嬢ちゃんは誰なんだい?」
酒瓶から口を離し、酔いに顔を真っ赤に染めた茉莉が無造作に指差したのは、陸斗の背におぶさるレティシア。
そういえば、仲間との再会で喜ぶあまり、紹介するのをすっかり忘れていた。
「あっ、そうだった。茉莉、聞いて驚くなよ?コイツはな、姿はこんなになっちゃったけど、あのレティシアなんだよ!」
「ほぅ~……こりゃまた、随分小さくなっちまって。あれだけの気迫は、一体どこに行っちまったんだい?」
「…………っ」
心の何処かでは気付いていたのか、たいして驚くことなくキセルの先で茶化すようにレティシアの頭を軽く叩く茉莉。
この屈辱的な扱いに、さすがのレティシアも苛立ちを隠せないようである。黙り込んだままだが、その鋭い視線は槍のように茉莉を射抜いていた。
「まぁ、いいさね。あとでキッチリ聞くこと聞き出すとして……お嬢ちゃん、そろそろ会わせてやったらどうだい?」
「それもそうね。いつまでも待たせてしまうのも失礼だし……」
「会わせてやったらって……へっ?」
「まだ、何かあるんですか……?」
何やら、顔を寄せ合って意味深な会話を交わすクレアと茉莉。
てっきり、クレアが会わせたいという人物は茉莉の事だと思っていたのだが、会話の内容からもどうやらそうではないらしい。いかにも、こちらを驚かせようという魂胆が見え見えである。
陸斗とラクーも顔を見合わせ、揃って首を傾げた。
「な、なぁ、一体何なんだよ?そろそろ隠さないで全部教えてくれよ」
「ふふっ、そうね。じゃあ……」
フラリと陸斗達から離れ、とあるテーブルへと向かっていくクレア。どうやら、陸斗に会わせたいという人物の本命はそちらに居るようである。
「ほら、連れて来ましたよ。いつまでも飲んでないで、早くこっちに来てくださいってば」
「わかった、わかったっつーの!ったく、最近の人間の女は気が強くなったもんだぜ……」
ちょっとした一悶着があったようだが、無理矢理テーブルから立たせた相手を連行してくるクレア。
しかし、人混みを掻き分け近付いてくるその哀れな被害者の姿を目の当たりにした瞬間、陸斗は思いがけぬ光景に愕然とした。
年の頃は、陸斗よりも少し上といったところの男性である。身長も割と高いようで、クレアよりも頭一つ分は抜きん出ていた。
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