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「本当に、この先で大丈夫なのか?」
ザクザクと、無造作に切り払われた枝葉が足下に散乱する。剣を片手に道を切り開いていたアークは、手元を動かしながらトリエラを振り返った。
「ええ、確かに間違いありません。このままお願いします」
「やれやれ……魔物を相手にするよりも、骨が折れるな……」
ぶつくさと小言を洩らしながら、アークは体力の続く限り剣を振るい続ける。
宿敵であるジャックと別れ、レティシアの存在を確信したアークとトリエラは、引き続き陸斗達の捜索を開始していた。
しかし、地図も無ければコンパスも利かない。捜索というよりは当てもなく彷徨っていると言った方が正しいような気がするのだが、それにしては彼らの行軍はずいぶんと進行方向が定まっているように見えた。
それもそのはず。何故ならば、歩き回っていたところにある手掛かりを感知したのである。微弱ながらも、発せられているクレアの魔力の輝きを。
今は、それを目指してひたすらトリエラの指し示す方向に向かっているところであった。
「そこに、クレア達が居ればいいんだが……それは、少々虫が良すぎというものか」
「そうですねぇ……それに、クレアちゃんの魔力にしては、ずいぶんと弱いような気もしますが……」
だいぶ近付いてきたはずだが、相変わらず伝わってくる魔力は微弱、むしろあまりに弱すぎた。本人の存在というより、残り香と言った方がいいかもしれない。
「せめて、マツリさんやリクト君と合流してくれれば良いのですが……」
「そう願いたいんだがな……っと」
目の前に立ちふさがっていた一際太い枝をアークの剣が断ち切ると、どうやら少し開けた場所に出たらしい。
二人は鬱蒼とした茂みから抜け出すと、ようやく一息ついたように身体を伸ばした。
「やれやれ、やっと少し休めそうか……」
「そんな暇はないと思いますよ?クレアちゃんの魔力の反応がこの辺りで……」
その場で周囲を見渡してみるが、立ち込める濃霧のせいでどうにも視界が悪い。しかし、間違いなくクレアの魔力はこの辺りから発せられていた。
「おかしいですね……ちょっと、近くを捜して―――あら?」
ぶにゅり。
歩き出そうと一歩を踏み出したトリエラの靴裏に、何とも言えぬ不思議な感触。
石ころにしては柔らかく、かといってちゃんとしっかりした芯もある。
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