幻惑の森 戸惑いの幻影

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そしてさらに、陸斗はある重大な違和感に気が付いた。 「ところで、クレア達はどこだ?この近くに居るんだろ?」 どこを見回しても、クレア達の姿が見えないのである。明るい返答を期待した陸斗であったが、無慈悲にもラクーの首は横に振られてしまった。 「…すみません、わからないんです。ボクもさっき気付いて、リクトさんだけは見付けられたのですが……」 「じゃあ……他の皆がどこに居るのかわからないってわけか……」 もしや、レティシアが暴れたことによって転送装置に何らかの問題が発生したのだろうか。今のところ原因として考えられるのはそれくらいか。 「それにしても……参ったなぁ……」 よりにもよって、こんな何処かもわからない森の中で仲間とはぐれて遭難となれば、生命の危機だって危ぶまれる。一刻も早くクレア達と合流しなければ。 「ラクー、何とかクレア達の匂いとかで捜せないか?結構鼻が利くんだろ?」 「ぅ……すみません、出来ないんです。周りの花達の匂いがキツくて……それに……」 陸斗の掛けた一縷の希望も虚しく、提案は頓挫。さらに、ラクーは陸斗の不安を煽る言葉を続けた。 「さっきから尋ねてはいるんですが、周りの木々達が何も教えてくれないんです。なんだか、森から出さないようにしているような……そんな気がするんです」 「うう……そんなこと言わないでくれよ……」 植物と会話が出来るという頼もしい能力を持つラクーも、今回ばかりは完全にお手上げ状態らしい。 「とにかく、今はクレア達を捜そう。俺達二人が近くに居たんなら、絶対この森の何処かに皆も居るはずだ」 「で、でも、無闇に歩き回ったら危険なんじゃないですか?ここは、皆さんが捜しに来るのを待って―――」 「それだと、クレア達も同じ考えだったらどうするんだよ?動ける内に、捜した方がいいって」 「う、う~……それはそうですけど……」 「ほら、決まり決まり。早く行くぞ」 まだ何か言いたげなラクーの手を引き、陸斗はさっさと歩き出した。 このまま日が暮れては、捜索はさらに困難を極めるだろう。多少の危険はあっても、もはや立ち止まってはいられな――― 「ぅげあッ!?」 数歩と歩かぬ内に、頭上からガサガサと枝葉を揺らす音。一体何事かと陸斗が見上げた瞬間、緑の天井を破って真っ黒な塊が彼を目掛けて落下し、押し潰した。
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