8人が本棚に入れています
本棚に追加
.
.
「あっっつい!」
.
自転車のペダルから足を離して
.
坂道を一気に下る
.
辺りは一面田んぼだ
.
.
高校二年生、夏休み。
.
私、黒須 美玲は
.
田舎の祖母の家に来ていた
.
.
小学校に上がってすぐ、母が交通事故で死んで以来
.
祖母だけが、私の理解者だった
.
残された父は、仕事に明け暮れ
.
私の事など見向きもしなかった
.
.
「挙げ句の果てに、再婚とか」
.
坂道をノーブレーキで下りながら呟く
.
.
そう
.
そんな父が
.
今年の春になって、家に女を連れて来たのだ
.
『美玲、この人がこれから、お母さんになるからな』
.
はあ?って思いながら女を睨むと
.
女は人の良さそうな笑みを浮かべて私を見た
.
.
最初のコメントを投稿しよう!