組み紐に“願掛け”

2/4
前へ
/4ページ
次へ
「なんじゃこりゃ?」 九月に入り、皐月から「菊の花を活けといて」と頼まれた美那が振り替える。 「?」 声の主である永倉は、机の上に置かれた“組み紐”を見て、呟いた。 「え?…あぁ、それ?“ミサンガ”だよ?」 「…み、み、さん…?」 「ミ・サ・ン・ガ! 暇だから、昔を思い出しながら作ってみたの!」 菊の手入れを終えて、美那は器用に糸をクルクル編んで見せる。 「おお!組み紐か!」 「う~ん?違うのかどうか、わかんないに…」 困った顔をすれば、美那は彼の手を見てから言う。 「これは、“願掛け”なんや! 手首などにつけて、自然と切れたら、願いが叶うんや!」 楽しそうに言う、“未来の願掛け”。 「…へ~」 暫く、その浅葱色にも似たソレを眺めていると、美那がクスクス笑いながら訪ねてきた。 「あげようか?」 「え?」 「まだ総司君も、知らんし…」 そして決まって言う。 「内緒やに?」 「…」 結局貰ったが、肝心の願い事が見つかるまで、コッソリ懐に入れておいた。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

84人が本棚に入れています
本棚に追加