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それから更に、“小常”に惚れた頃、またセッセと“ミサンガ”という組紐を編み出した。
しかも今度は、赤と白を組み合わせた紐を二本。
本人曰く、「運命の赤い糸!」と言いながら、「なんちゃって♪」と、笑いながら…。
小常に“由来”と、「お節介な女中が、末永くいられるように」と、美那が言っていた言葉を言えば、彼女はハラハラ泣きながら、大事そうにその紐を握っていた。
本当は二人を逢わせてやりたかったが、“時間”がソレを許してはくれなかった。
外の世界に出て、小常は遊びにくる奴らからの話を聞きながら、その紐を使うことなく、匂袋にしまった。
なんとなく、真似た事をすれば、彼女は紐と同じように赤くなって、笑っていた。
でも、時勢の波は、“平穏”すらも取り上げる。
笑い転げた仲間や、戦に旅立つ日に見送ってくれた彼女の“死”。
戦の最中、彼女と己を繋ぐ唯一の“娘”が、手渡された。
乳飲み子の娘は、匂袋だけを持っていた。
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