第一章 パンドラの箱

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急遽、俺たちは魔力向上の為、ゼンと初めて出会ったあの場所へ向かっていた。 住んでいる街を出た時は、オレンジ色の空をしていたが、今はもう暗闇に支配され、星の輝きが綺麗に夜空を装飾している。 ガタンゴトン…… いつ以来だろう、祖父母の家に行くのは。そんな事を、揺れる車窓の窓枠に肘を置き、頬杖をついて考えていた。 家族と居るのが恥ずかしい。こう言うのは、可笑しな表現だろうが……。【家族と居る=カッコ悪い】なんて、勝手な方程式を作り上げ、距離を置くようになっていた。 田舎で待っている祖父母からすれば、急なお願いであっても、『随分、会ってない孫に会える』と、嬉しかったに違いない。電話越しではあったが、声が弾んでいたように感じた。 俺たちを乗せた電車は、あっという間に目的地の駅へ辿り着いた。周りの景色は相変わらず殺風景のまま。薄暗い外灯がちらほらあるだけ。それに沿って、緑一面の田んぼ道を進んでいく。
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