第一章 パンドラの箱

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「おーい、晴!」 遠くで俺を呼ぶ人影。歩くスピードを早め、近付いていくと…… 「あっ!じいちゃん!」 「なかなか顔出さんけど、生きとったか?」 「この通り、生きてるよ。じいちゃんこそ、お迎えまだみたいだね」 「そらがのう、つい最近来たんじゃが追い返してやったわ」 豪快に笑う祖父。元気そうで安心した。 「それより……。家の中で、ばあちゃん待ってんじゃないの?」 「そうじゃった、そうじゃった!ばあさんの事、すっかり忘れておった」 そう言い、祖父は俺の前を歩き出した。ほんの少しだけど、彼の背中が小さく見えた。 俺が大きくなるほど、祖父は老いていく。人間の摂理で仕方のない事だけど、何か胸に突き刺さった。
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