第一章 パンドラの箱

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翌朝、陽もまだ昇る前。俺はゼンに起こされ、家の裏にある森の中を歩いていた。 「お前なー、いくらなんでも早すぎだろ。まだ五時前じゃん……」 「陽が出てからでは、意味がないのだ。晴、もっと早く歩けぬのか?」 さすがに、寝起きで体が重い。おまけに、霧が立ち込め、視界と足場も悪い。 「そう無理を言うなって」 俺が大きなアクビをした、その瞬間。前方から何かの気配を感じた。 「ゼン、何か近付いてきてないか?まさか、修業って……」 「あぁ。実戦の方が、お前には良かろう?」 「いやいやいや……。どうすりゃいんだよ!?」 「考えてる暇は、ないぞ!晴、構えろ!」 突然、「構えろ」と言われても、どう構えたらいいのか、それすら分からない。格闘技をやった経験もないし、喧嘩すらない。 とりあえず、ボクシング選手のように顔の前に拳を作り、構えた。
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