第一章 パンドラの箱

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二つの事を同時に行えるほど、俺は器用じゃない。絶対、どちらかに偏ってしまう。 「……落ち着け、俺」 自分に向け、呪文の様に繰り返す。心が乱れていては、集中なんて出来る訳がない。 「晴、焦るな。まだ始めたばかり……」 「悪いな、ゼン。少し、黙ってて」 目を瞑ったまま、俺は静かにゼンに言った。そして、向かってくる風に無防備のまま、意識を集中させる。 「晴、何を考えているッ!?構えなければ、骨が砕けるぞ!」 そんなゼンの声も、耳に入らないほど、全神経を風に向けていた。 すると、先程は聞こえなかったゴーワッという音を耳が捉えた。それが聞こえるのとは逆方向に、体を振り、それを交わしていく。 「……レッド・アイの力なのか、それとも、晴の実力か」 ゼーハー、ゼーハー、肩で息をする俺にゼンは、そう呟いた。
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