第一章 パンドラの箱

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「そろそろ、夜が明けるな」 ゼンが言い終えたのと同じくらいに、明るい朝日がゆっくりと顔を出し、立ち込めていた白いモヤを断ち切っていく。 清々しい風が森の中を吹き抜け、朝の訪れを木々たちに伝えているようだ。 「……案外、早起きも悪くないかもな」 「そうであろう。ならば、家に帰ってからも、今日と同じ時刻に起こしてやろう」 「それは、遠慮します。……ん!?あ、あれ!?」 朝日を浴びた途端、身体中に出来た無数の傷が徐々に消え始めた。不思議すぎる現象に慌てふためいていると、ゼンが静かに言った。 「魔物は、日の出と共に消える。特に、悪意のない魔物の場合、付けられた傷も一緒に消える」 「へぇー、悪意のない奴も居るのか。何か意外」 「魔物も人と変わらぬ。悪に染まる者も居れば、染まらぬ者も居る」 その時だ。俺の左目に激痛が走った。左手で目を抑え、地面にうずくまる。 「晴、大丈夫か!?」 痛みに耐えながらも、少しだけ、目を開く事が出来た。とは言え、指の隙間から見える世界はボヤけている。
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