第一章 パンドラの箱

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目を開けると、見慣れた木目の天井がそこにあった。 「……?」 俺は首を傾げ、シャットダウンしていた思考に再起動を掛ける。ゆっくりだが、確実に記憶が甦っていく。 「俺、森に居たはずじゃ……」 「居ったよ。仰向けで、ぶっ倒れとったがな。どうだ、気分は?」 「あ、じいちゃん!……まだ多少、クラクラするかな」 開いている襖(ふすま)から、祖父が現れた。 「晴。寝坊助のお前さんが、あんな朝早くから何をしてたんじゃ?」 「それは……」 祖父の質問に答えようとした時、頭の中にゼンの声が響いた。 「分かっておるな?真実を語ってはいけぬぞ」 それに対し、ゼンと同様、頭の中で「へいへい」と軽く返し、俺は祖父に言った。 「変な夢見てさ。気分転換に散歩してたんだ」 「そうか。なら、まだ少し寝てろ」 「あぁ。そうする」 そう言い、祖父は部屋から出て行った。布団に入ったまま、窓の外に目を向ける。
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