第一章 パンドラの箱

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何処までも続いている空の青。風に揺れる緑の木々。近くの木からは、小鳥の囀(さえず)りが聞こえてくる。 ボーッと、こうして眺めているだけで、心が安らぐ。実家じゃ、こうはいかない。 朝から晩まで、車が走っていく音。無駄に自転車のベルを鳴らしながら走る奴。工事の耳障りな機械音。 心が落ち着くどころか、イライラばかりが積もっていく。こんなに穏やかな場所に居ると、あんな騒がしい所でよく生活していられたなと思う。 しかし、もう直、その日常に戻らなければいけない。人は恐ろしいほど、順応性に優れた生き物だ。二・三日、居ただけでも、その場所に馴染んでしまうのだから。 きっと、もとの生活を取り戻すのに時間は掛からないだろう。 そんな事を考えていた時だ。祖母が朝食を俺の元へ持ってきてくれた。
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