第一章 パンドラの箱

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「晴。いっぱい食べて、よく休むんだよ」 「ばぁちゃん……。わざわざ、ありがとう」 枕元へ朝食を置き、無言で微笑んだ祖母。だが、その目は全てを見通しているようだった。 「……ばぁちゃん」 背を向け、歩き出した祖母を俺は引き止めた。本当に見通しているのか、確かめたくて。 「世の中、知らなくていい事は、たくさんある。……時が来れば、知らざるを得ない事もあるけどね」 そう俺に言い残し、祖母は去っていった。この言葉から、祖母は何かを知っている。俺が知らない何かを……。 しばらく、それについて考えていたが、腹の虫に邪魔された。 「ダメだ……。早く起きて、腹が減った」 体を起こし、朝食に食らい付く。
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