第一章 パンドラの箱

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空になった食器を持って、俺はキッチンへ向かった。寝ていていいと言われたが、後片付けまでしてもらうのは、さすがに悪い。 「あれまぁ、持ってきてくれたのかい?」 「御馳走様。自分の分は、自分で洗うから。休んでなよ、ばぁちゃん」 祖母は洗い物を終えたばかりだった。 「ありがとよ。じゃあ、茶でも飲むとしようかね。……終わったら、晴も飲みなされ」 水の流れる音。その背景で聞こえた祖母の声。何処と無くだが、似てる気がした。話し方と声質。性別は違えど、声の質が似ている場合がある。 例えば、肉親……とか。しかし、立証はない。二人を繋ぐモノ。それを裏付ける決定的なモノが欠けている。時が来れば……なんて言うけど、そこまで待てる自信がない。 ちゃっちゃと洗い物を済ませ、俺は祖母が待つ居間へ急いだ。 「早かったねぇ」 のんびりと外を眺めながら、お気に入りの玄米茶を飲む祖母。逸る気持ちを抑え、まったり流れる空間に、俺は波長を合わせた。
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