第一章 パンドラの箱

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「まぁね。たまに、母さんの手伝いとかするし」 「そうかい。……で、晴。何が聞きたいんだい?」 笑顔の祖母から差し出された茶を口にする寸前。俺は、固まった。……手の内が読まれている。 ある程度、話した後、自ら切り出すつもりだった。バレてしまっては、仕方がない。意を決し、俺は祖母に聞いてみた。 「ばぁちゃん。あのさ、"ゼン"の事……知ってる?」 俺の質問に、動揺の色を浮かべるかと思ったが、予想は外れた。相変わらず、祖母からは、ゆったりとした雰囲気が漂っている。 そして、細い目を開き、静かに口を開いた。 「善(ゼン)……。森の小さな祠に閉じ込められし、哀れな勇者」 「勇者!?……見た目、侍だったけど」 勇者って言ったら、手にはデッカイ剣。そんでもって、長いマフラーを風になびかせている。そんなイメージなんだが……。 明らかに、アイツは勇者って感じじゃなかった。
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