第一章 パンドラの箱

27/42
前へ
/42ページ
次へ
祖母は話を続けた。 「勇ましい者は、みんな勇者さ。この話は、私の祖母から聞いたんだけどね……」 ― 時は、戦国。天下統一を目指し、人々は争いに明け暮れた。しかし、天下に興味を抱かない変わり者も居た。ゼンも、その内の一人だ。 刀を振りかざし、天下の為と人を切り刻んでいく、それが彼には理解出来なかった。 ある日。彼の剣術の腕を見込み、一人の青年が訪ねてきた。 「お主の力を貸してほしい」 それは、北で勢力を付けてきている伊達軍当主、独眼竜 伊達政宗。周りが怖じ気づく中、ゼンはいつもと変わらぬ調子。 「天下取りには、手を貸さぬ」 「そうではないのだ、善殿」 政宗の真剣な表情。それに、ゼンは何かを察し、場所を変える事を提案した。 しばらく歩き、二人は誰もいない静かな小川へと着いた。 「此処なら、ゆっくりと話せるであろう?」 「気を使って頂き、忝(かたじけ)ない」 政宗は、ゼンに頭を下げると、本題へ入った。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加