第一章 パンドラの箱

9/42
前へ
/42ページ
次へ
少し間を置いてから、ゼンは話し出した。おそらく、何かを考えていたのだろう。 「……【西雲寺(さいうんじ)】に行けば、何か分かるかもしれぬ」 「西雲寺?……何処にあんの、それ?」 「西の方角に行けばある」 「いくらなんでも、アバウト過ぎだろ。ま、いいや。夏休みの宿題やりに図書館行こうと思ってたし。ついでに、調べてみるか」 机の上の鞄に宿題を積め、図書館へ向け、家を後にした。 暑い外気で、アスファルトには蜃気楼が立ち上っている。地面にいる影も暑そうだ。 しかし、ゼンの影は見当たらない。彼は姿がないから、影もないのだ。
/42ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加