プロローグ

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ツバキの一番弟子のカムイは今年中学二年生になったばかり 赤茶のツンツン頭に襟足だけ長く伸ばしたヤンキーみたいな髪型に、猫のような大きなつり目……いかにも生意気そうな面構えだ。 古めかしい水干装束を纏い、腰元には太刀の模造刀を下げ、左手には舞扇を手にしている。 いつもクールぶっている生意気な一番弟子が、柄にもなく緊張しているのを見て、ツバキはニヤリと笑って言葉をかける。 「お前一人に[門番]を任せるのは今日が初めてだったな。 まあ、俺に言わせりゃまだまだ力不足だが、7月に後任の[わらべうた姫]がこっちに来たらお前も先輩になるんだから、今の内に頑張って仕事覚えろよ?」 「だから、わかってるってば!」 まるで、過保護な親をうっとおしがるようにカムイは口をとがらせる。 「本当にわかってんのかぁ~~? ……と、そろそろ[門]が開く時間だ。 準備はいいか?カムイ」 ツバキは、再び趣味の悪いロレックスを見て声をかけた。 只今の時刻は4時44分 カムイは、今度は真剣な顔つきになってひとつ頷き 鳥居の前の空間を、じっと見つめた。
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