25515人が本棚に入れています
本棚に追加
/34ページ
土曜の会社は平日とは打って変わって静かなものだ。
来客はないし、電話もほとんどないから休日出勤の方が仕事ははかどる。
10時になり、コーヒーを二人分入れて事務所で一息つくことにした。
コーヒーをすすり始めた時、池口さんが思わぬことを言い出した。
「休日出勤なんかして、他の予定は? …彼氏とか大丈夫なの?」
「…池口さん。…私に彼氏がいる気配、ありました?」
「…ない。かな」
「…それなら聞かないで下さい。」
「確認のためにね。」
「そんなこと確認しなくていいですよ。」
「…なんで彼氏つくんないの?」
…つくらないつもりなんてない…
私が小さなため息をついたその時、
カツッ…。
静かにドアが開いて、硬い革靴の音が響いた。
…部長だった。
「…お疲れさまです。」
池口さんに返事をする前に、部長が事務所に入ってきた。
「お疲れさま。休日まで出勤させて悪いな。」
部長が席に着きながら言う。
「いえ。大丈夫です。コーヒー入れてきますね。」
私は席を立って給湯室に向かった。
最初のコメントを投稿しよう!