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「池口くん、今日はこのくらいにしてゆっくり休んだほうがいい。」
「部長。俺、今日はなんだかいい気分です。まだ帰りたくないなぁ。」
「あまり遅くなると、室井くんもいるから。」
「まだ早いですよ?」
「女将さん、頼みます。」
有無を言わせず、部長はお会計をするために席を立った。
「池口さん、今日は疲れてるしこのくらいがいいですよ。またの機会にしましょ。」
「またって…、室井ちゃん、誘ってもなかなか来てくれないじゃん。」
…それは…そうだけれど。
「いつもって、そんなに誘われてないですし。じゃあ、また部長も一緒に。琴ちゃんも誘って来ましょう、ね?」
池口さんはその後もなにやらもぶつぶつ言っていたけれど、やっとのことで立ち上がる。
「女将さん、ありがとうございました。また、必ず来ます!」
「待ってるわ。」
とても美人な女将さんは柔らかく笑って私たちを送り出してくれた。
…女将さん、綺麗だなぁ。
女将さんに会いたくて来ちゃうお客さんも大勢いるだろな。
…もしかして、部長もそうなのかな。
その時、
訳もなく…
私の心の奥が静かに沈んだ。
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