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部長の背中の二歩後ろ。
いつも一緒にいるのに、外でこうして二人きりなのは初めてで、変に緊張してしまう。
私はなるべく自然な会話になるようにドキドキしながら切り出した。
「部長…ごちそうさまでした。」
「今週頑張ってもらったからな。」
「ステキなお店ですね。女将さんも…。」
「…室井くん。まだ、時間は大丈夫か?」
私の言葉は全く気にしない様子で、それに重なるように部長が言った。
…何だろう…?
「…はい。」
部長に対する返事は反射と言ってもいいくらい『はい』しかない。
だからこの時も…
そう答えてしまった。
すると、部長が遠慮がちに言った。
「…桜。見に行こうか。少し先にいいところがあるんだ。」
…桜……?
「行きます!」
桜というキーワードだけで、モヤモヤしてた気持ちも飛んでしまう。
…私って、単純だ。
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