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しばらく歩いて、川沿いの遊歩道に出た。
その瞬間、私は目を見開いた。
「きれ……い……。」
真横に来ていた部長と目が合う。
二人が同時に笑顔になった。
「なかなかいい景色だろ?」
「なかなかなんてもんじゃないです!こんな素敵な桜、初めてです!」
「…ホントに素敵……。」
「…ホントに…。」
あまりの感動に言葉を失うとは、このことだと思った。
そこは川沿いに規則正しく桜が並び、
遊歩道に少し距離をおいて続く街灯に自然とライトアップされたようになっていた。
街灯は白く強い明かりではなく、オレンジに近い、街灯としての役割には不十分すぎるほど淡い光だった。
か弱い灯りに照らされた桜は暗い闇にほうっと浮かび、なんとも幻想的だった。
本当に
初めて見る桜の姿だった。
私は、部長の存在を忘れてしまうのではないかと思うほど、
ただ、その景色に見入ってしまっていた。
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