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「…もう少し進もうか。」
部長に促され、少し暗い遊歩道を進む。
一歩、一歩。
惜しむように
ゆっくりと。
しばらく行くと、足が進まなくなった。
遊歩道の木製の柵に手を掛けて、目の前の景色に吸い寄せられるように見つめ続けた。
私はこの景色に酔っていたのかもしれない。
…トン。
隣にいた部長と肘があたって、私は揺ら揺らした気持ちのまま部長に顔を向けた。
すると、部長は眉を下げてなぜか困った表情を浮かべ、私の頭にそっと手を置いた。
「…そんな顔…俺以外に見せるなよ…。」
そう言って、大きな手を私の頭から離した。
私はどういう意味か考えようとしながらも、
大好きな桜に囲まれた高揚感と部長に頭をさわられた恥ずかしさで
冷静に考えることなど出来なかった。
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