25545人が本棚に入れています
本棚に追加
帰り道。
まだ瞼(マブタ)の裏に残る桜に興奮しながら、私にしては珍しく次々と言葉が溢れ出た。
「本当に綺麗でした…私…今日はこの興奮で眠れないかもしれません。本当にキレイだった…お店もお料理もステキだったし。部長、本当にありがとうございました。」
私が心からのお礼を言うと、部長は目を細めた。
その笑顔を見て私はまた口を開く。
言わずにはいられなかったのかもしれない。
「…それに、今日は部長の笑ってるところもたくさん見られたし…。」
「…そうだったか?」
「そうでしたよ。なんだか私まで嬉しかったです。部長、会社でももっと笑顔ですよ。みんな、部長のこと、密かに怖がってるみたいですし。…部長は…そんなんじゃないのに…。」
「…それくらいに思われてた方がやりやすい。」
そう言いながら、
また…笑った。
…その笑顔があるのに…。
それから部長は私を駅まで送ってくれた。
一人のお花見も覚悟してたのに、
部長のおかげで
今年のお花見は最高のものになった。
この日、私は
あの桜の景色に興奮して眠れないと思っていたけれど、
『…そんな顔…俺以外に見せるなよ。』
その言葉が頭から離れなくて
やっぱり…
…眠れなかった。
最初のコメントを投稿しよう!