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下手な芝居をしながらも、なんとか二人になることができた。
らしくないが、内心緊張しながら桜を見に行こうと誘った。
室井は桜と聞いて、子供みたいに顔を輝かせ、俺の誘いを承諾してくれた。
桜も来週に入れば散り始めるだろう。
今日しかチャンスがなかった。
どうしてもあの景色を見せてやりたかった。
まだ誰にも教えたことのない、
…あの場所で。
少し距離があるので、仕事帰りのヒールで歩かせることに躊躇(タメラ)いはあったが、俺の心配をよそに、室井の足取りは軽かった。
途中、携帯のことを思い出して室井が慌てたが、上手く誤魔化せたようだ。
…単純なのか、純粋なのか。
思わず顔が緩んでしまう。
そして、その場所に辿り着いた。
室井の反応が気になって彼女の顔を盗み見る。
彼女の目は輝いていた。
どうやら気に入ってくれたようだ。
俺は室井の表情に満足しながら先へ進もうと促した。
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